書き始めるきっかけになったのは、ストーリーのタイトルにも使わせていただいた、EAGLESの『DESPERADO』。日本では、『ならず者』というタイトルがついている名曲で、昨今ではキムタク主演のドラマ『華麗なる一族』の挿入歌として知られているそうです。
でもこの歌、私には、DEANとJOHN父ちゃんのテーマソングに聞こえます。だって、こんな歌詞なんですもの!
さらに、ここをクリックすると、日本語の訳詞のはいったミュージッククリップに飛べます。 曲を知らない方は、まずぜひ、聴いてみてください。
この曲は、1973年にリリースされた、EAGLESの2枚目のアルバムのタイトル曲でした。1954年生まれのJOHN父ちゃんは、ナイーブな10代のころに何度も聴いているはずです。多分、MARYママとのデートの時にも聴いてたんじゃないのかなぁ…。でも多分その頃には、この歌詞の内容が身にしみてはいなかったし、よもや自分がそんな生き方をするなんて、考えてもいなかったと思います。
もしもこの曲が、DEANとSAM両方にとって、”父ちゃんの思い出を含んだ特別な曲”であったら?????
さらにある日突然、この曲が、二人の乗るインパラのカーラジオから流れてきたら?????
こんな「?」がふと頭に浮かび、気がつくと私は、お話を書いていました。
すべては、私にとっても久方ぶりだった、この大好きな曲との再会から始まったことです。
なので、お話の始めにはまず、『DESPERADO』の歌詞付きミュージッククリップを貼りました。 よければ、”元祖DESPERADO・JOHN WINCHESTER”のフォトをクリックしてミュージッククリップに飛び、それを開いたまま、別ページでこのラボを開いて、インパラのなかのDEANとSAMを想像しつつ、彼らと同じように曲を聴きながら、読んでみてください。
さらに、書いているうちにどうしても、もう一曲音楽を加えたくなってしまい、JOHN父ちゃんとDEAN、そして不肖maxyの最愛のバンドであるLED ZEPPELINの曲も、お話に挿入してしまいました。
曲のタイトルは、『WHEN THE LEVEE BREAKS』。このタイトル、SUPERNATURALシーズン4第21話にもそのまま使われてましたよね。
というわけでこの曲も、インパラのカーラジオから流れてくる設定です。
よろしければ、DEANが突然ラジオをつけるシーンで、インパラのフォトをクリックしてみてください。『WHEN THE LEEVEE BREAKS』のミュージックビデオに飛べます。兄弟とおんなじ曲を聴きながら読んでいただけたら幸いです。 なお、クリップ画面右隣の「詳細」の字をクリックすると、曲の歌詞が出てきます。
そしてもちろん、みなさんお待ちかねのキョウさんの素敵な挿絵もあります。今回は二人の絵を、最後のほうに置かせていただきました。 理由は、二人が、”そんなような顔”していたから。どうぞ、存分にお楽しみください。
SEASON5 本編のエピソードでは、DEANとSAMは、二人の間に横たわる深い溝を越えることができずに苦悩しています。 二人がこの辛い試練を乗り越え、以前にも増して強い絆で結ばれることを祈りつつ(そして、確信しつつ)、皆様にはこちらの空想ストリーも楽しんでいただけたら幸いです。
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♪♪♪ 『DESPERADO』By EAGLES
「ねえ兄ちゃん、おなかでも痛いの?」
「……」
SAMは、突然に黙りこんだ兄の様子が気にかかっていた。
「兄ちゃん? 聞いてる?」
「……」
「…だから、さっきのタコスは食べないほうがいいって言ったのに…。変な味がするタコスは、食べちゃダメだよ。腐ったタコス食べて酷い目にあったことあるくせに、全く懲りてない…」
「SAM、お前、ひとりでブツブツ、何言ってんだ?」
「やっと口きいたと思ったら、これだもんな……何でもない」
「何でもないならどうして、腹痛いか、なんて聴くんだ?」
「聞こえてんなら、返事くらいしてよ。兄ちゃん、急に黙るから心配になったじゃない」
「何でもない」
「そう? さっきまで、パブでナンパした女の子がどんだけ自分にぞっこんだったかって、自慢しまくってたくせにさぁ…なのに…」
「妬いてんのかぁ、SAMMY?」
「違います! でも、急に黙るなんて変だよ。どうかしたの?」
「……」
「ほーら、まただ。一体なんなの、兄ちゃん?」
「……」
「僕には言えないこと?……」
「……」DEANが黙りこくる時は、絶対に心の中に何か隠している。SAMはそれを、子供の頃からの呼吸で知っていた。
「あっ!」
「な、なんだよ、SAM、急にでかい声出して…」
「これだ。この歌!」
「歌がどうした?」
「図星でしょ、兄ちゃん?」
「だから、歌がなんなんだ?」
「兄ちゃん、これ、父ちゃんが良く聴いてた歌だよね? 確か、『DESPERADO』…」
「お前、覚えてたのか?」
「うん」
「でも、お前まだあの頃は…」
「小学生だったよ。だけど覚えてる。父ちゃん、一日中この曲のはいったカセットテープ聴いてたから…」
「EAGLESだ」
「うん。そう、EAGLES。僕も好きだった」
「ふぅ~ん、初耳だな」
「そう? …でもさあ、兄ちゃん」
「ん?」
「似てたよね?」
「何が?」
「この歌詞の男と、父ちゃんと…」
「……」
「人の言うことなんて全く聞かない、頑固な崖っぷち男で…」
「……」
「そろそろ潮時なのに、わかってない」
「……」
「だからかなあ…父ちゃん、いつも寂しそうだった。これ聴きながらさぁ…」
「……」
「僕、そんな父ちゃん見てると、いつも泣きたくなったんだ。兄ちゃんにからかわれるのがイヤで我慢してたけど、なんだか哀しくて…。いばりまくって命令する父ちゃんのほうがまだマシだったよ。思いっきり逆らえたもん」
「……」
「しょんぼりしてる父ちゃんは、小さく見えた…なんだか…。ねえ、兄ちゃんはどう思ってたの?」
「……」
「ねえ、話してよ、兄ちゃん!」
「SAM、俺は、この曲が大嫌いだった。今でも嫌いだ」
DEANが突然口を開き、怒りを含んだ抑揚のない声でSAMの言葉を制した。そして、想い出を噛みしめている弟をまるで無視し、問いかける間さえ与えず、乱暴にカーラジオのオフボタンを押した。
「あ、なんでラジオ消すの、兄ちゃん…」
「だから、この歌は嫌いだって言っただろ!」
「♪Desperado, why don't you come to your senses?You been out ridin' fences for so long now…」(DEAPERADO、なぜ目をさまさないの? ずいぶん長いこと塀の上にいるよね)
SAMは、兄に抗議するかのように、小さな声で歌いだした。
「やめろ、SAM!!!」
「Oh, you're a hard one.I know that you got your reasons. These things that are pleasin' you Can hurt you somehow…」 (ホントに、君は頑固者だね。君なりの理由があるだろうけど、楽しいことが君を傷つけることもあるんだよ)
「そんな歌、歌うのやめろよ。だいたいおまえ、音痴じゃねえか!」
SAMは兄の抵抗を軽くいなし、でも歌うのをやめて、再び兄に語りかけた。
「兄ちゃん、今じゃこれってまるで、僕たちのこと歌ってるみたいだよね?」
「……」
「笑っちゃうよね。ねえ、兄ちゃん、 そう思わない?」
「ったく、しつこいなお前……でも確かに、俺達もしょせん、崖っぷち男だ。じゃあ、こんどはどんな崖っぷちに立ちましょうかねぇ? そうだ、グランドキャニオンの絶壁はどうだ?」
「笑えないよ。そういう冗談」
「冗談じゃねえ」
「じゃあ、何?」
「俺たちの真実だ」
「そう?」
「違うか?」
「まあね…。…でもさぁ、僕たち…うん……間に合うと思う?…」
「何が?」
「…You better let somebody love you, before it's too late…」(愛してもらおうよ、手遅れにならないうちに…)
SAMがもう一度、小さな声で口ずさんだ。
「女のことかぁ? 心配ねえ。そんなの、掃いて捨てるほどいる」
「そういうんじゃなくて…」
「じゃあ、どういうんだ?」
「…僕たちも…」
「宝くじ当てて、大金持ち!」
「はぐらかさないでよ」
「はいはい。じゃあ、俺たちのやるべきことにケリつけたら、SAMMYちゃんは可愛いお嫁さんみつけて、丘の上の真白なお家に住んで下さいね」
「茶化さないで!」
「茶化してない。俺は本気だ」
「じゃあ、兄ちゃんはどうする気?」
「俺かぁ? 俺は、このまんま一生旅して暮らすかな。昔の女んとこ回るだけでも、10年はかかるかも。それにまだ、グランドキャニオン見てないしな」
「本気?」
「俺はいつも本気だ」
「…そう…」
もうこれ以上は、SAMをはぐらかせない。でも、ホントの気持ちなんて、口が裂けても言いたくない…。
そう思ったDEANは、ヴォリュームをフルにしてカーラジオのオンボタンを押した。
♪♪♪ 『When The Levee Breaks』By LED ZEPPELIN
スピーカーからは突然に、胸がはりさけそうに哀しげなブルースハープと、雷のようなドラミングが、大音響の飛び出してきた。SAMは椅子から飛び上がった。
「わ~、兄ちゃん、いきなりラジオつけないでよ。そのすごい音!」
「Wow、SAMMY 、ツイテルな。お前の大嫌いなZEPPELINだぞ!『When The Levee Breaks』だ!!!!!」
「…びっくりして、アタマぶつけちゃったじゃない、まったくもう…。鼓膜も破れそう…」
「ふん、軟弱者。ロックはなぁ、なんてったって、ZEPPELINだ」
「…吐きそうだ…」
「でしょうね。こんなの、お坊ちゃまのご趣味には合いませんよね。でも、父ちゃんは大好きだった。俺もだ」
SAMは、半分耳をふさぎながら、大声で兄に抗議した。
「皮肉んないでよ、兄ちゃん。そういうことじゃなくて…」
「じゃあ、なんだ?」
DEANも、大声で言い返した。けれど、SAMには気づかれないように、そっと、カーラジオのヴォリュームを落とした
「ZEPPELINを聴いてた日の父ちゃんがいつもどんなだったか、兄ちゃんは覚えてないの?」
「また父ちゃんかよ? お前、今日はどうかしてるぞ、SAMMY…」
「ZEPPELIN聴くときの父ちゃんは、たいていはものすごく荒れてるか、すっかりふさぎこんでるかのどっちかだったじゃない? あの時の感じ…そばにいると胸を押さえ込まれるような父ちゃんの空気…。思い出すと、今でもなんだか…」
「……」
「…ねえ、兄ちゃん…」
「When the levee breaks I’ll have no place to stay.…堤防が壊れたらいるところがないってさ。こっちもやっぱり、崖っぷちだな」
「兄ちゃん」
「……」
「兄ちゃんってば!!!」
「…聞こえねえぞ…」
とうとうSAMは、DEANに向かって思い切り叫んだ。
「でも僕、ホントはもう、ZEPPELIN嫌いじゃないよ~!」
「……」
またもや聞こえないふりをするDEANを無視して、SAMは続けた。
「わかる気がするもん。父ちゃんのこと…」
「……」
「兄ちゃんのことも…」
DEANは、SAMの言葉をすっぱりと遮るかのように、低くかすれた声で歌いだした。
「Cryin wont help you, prayin wont do you no good,Now, cryin wont help you, prayin wont do you no good…」(泣き叫んでも、助けにはならない。今は祈っても、いいことなんてない…)
ZEPPELINのグルーヴが、2人を乗せたインパラを揺さぶった。助手席ではSAMが、半分顔をしかめながらも、肩を揺らしてリズムをとっている。
…SAMのヤツ、吐きそうだ、って言ったくせに…。
DEANは突然アクセルを踏み込んだ。インパラが野太いアルトの悲鳴をあげ、土埃を舞いあげて弾け飛んだ。
「兄ちゃん、飛ばしすぎだよ!と・ば・し・す・ぎ!」
「まだまだだ!!!!!」
…SAMMY、お前には決してわからないこともあるんだ。いや、お前は、知る必要なんてない…。
DEANは、SAMだけは決して、DESPARADEになんかしたくないと思った。
…もっとスピードあげるつもり? それとも、僕にはまだまだわかんないって意味? ZEPPELINのことも父ちゃんのことも。そして…。
尋ねようとしたけれど、SAMは言葉を飲み込んだ。
…兄ちゃん、多分僕も、ずっと旅すると思う。丘の上のおうちも、多分ないよ。だって僕もやっぱり、DESPERADO…。
DEANは、切なそうな目をしてアクセルを踏み込み続けた。
想い出と不安を断ち切るかのようなジェットコースタードライヴに身をまかせ、ひりひりするような痛みを共にを感じながら、SAMは本当の気持ちを呟いた。
「…だから僕、ずっと、兄ちゃんと一緒にいる…」
SAMの声は小さすぎて、インパラの悲鳴とROBERT PLANTのシャウトにかき消された。けれどもまるで弟の声が聞こえたかのように、DEANは横顔でかすかに微笑んだ。
♪おしまい























